松尾栗園の一年


・冬期剪定

 

2月~4月の丸3ヶ月間、1年で最も作業時間を費やします。簡単に言えば、残す枝を決めて、不要な枝を切り落とす作業です。

残す枝が多過ぎると陽当たりと風通しが悪く、かえって不作を招きます。

残す枝が少な過ぎると、根を養う葉っぱの枚数が不足して、樹が弱ります。

枝を上に高く伸ばすと、日陰が広がり、新しく良質な枝が育ちません。

1本1本の樹と向かい合って、それぞれのベスト樹形を探りながら剪定します。


・種&苗植え


松尾栗園は、樹齢40年以上の老木が大半を占めます。年々弱って枯れる樹も多く、入れ替わりで苗木を育てなければ収穫量は減る一方。

しっかりと根を張る、いい苗木を育てることが急務。

ただし、苗木を植えて収穫できるまでは3年、種から育てる場合は5年を要します。


・土壌分析


松尾栗園では年間複数回、専門家に土壌分析を依頼。分析箇所は栗園内の代表地点23箇所。土壌分析をする目的は2つ。1つは施肥設計の目安。主に窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウムの土壌含有量をチェック。

基本的に、すべて足りていれば無施肥。何か不足していれば、足りない成分だけ最低限必要量を施肥します。

ただし、あくまでも目安。樹勢の強弱や刈り草の土壌還元量などを計算して施肥設計を立てます。

 

もう1つの目的は栗の樹の生態を探ること。定期的に分析することで、春夏秋冬のどの時期に養分が減っているか(栗の根が吸っているか)見えてきます。栗の根が欲しているベストタイミングでの施肥を見極めます。

 





・枝集め&焼却


細い枝はその場で切り落として土壌に還元。

やや太めの枝は我が家の薪ストーブで使用。

 

丸太などはドラム缶で燃やして炭を作り、土壌に還元します。

 

 


・草刈り


除草剤は使いません。5ヘクタール以上の栗園を必ず毎月刈ります。

90cmの自走式草刈り機で平面を。残りの斜面、苗周り、切り株周りは刈払機を使用。時間も労力も人件費もかなり要します。

 

でも、園内に植物性有機物を還元している現実。これが嬉しくて草刈りを嫌いになれません。

さらに、こまめに草を刈ることで、害虫の一次寄生を減らす=減農薬につながっています。


・夏期剪定


より良質な枝、良質な実を育てるためには陽当たりを良くすること。

放っておくと枝同士が重なり合って、お互いの光合成を邪魔します。軽度の間引きをすることで、育てたい枝と実に養分が凝縮します。


・農薬散布


農薬使用量はメーカー使用基準(石川県の使用基準も同じ)の30%以下にまで抑制。それだけ減農薬できる理由は、

①こまめな草刈り=害虫の一次寄生を防ぐ

②樹を低く剪定している

③散布方法

の3点にあります。松尾栗園では、動力噴射機を使った農薬散布をします。100mのホースを引っ張って人の手で散布するやり方です。

樹高が3~4mと低いため、水圧が少なくても栗の実1つ1つにピンポイントで散布できます。手間はかかりますが、農薬の量は必要最低限に抑えられます。

(逆に高い樹だと、水圧を上げるため大量の農薬が必要となります。余剰な農薬が栗園内に残ります)


・礼肥散布


松尾栗園で一番重要視しているのが9月に効く施肥。栗の樹に対して1年のお礼を込めて礼肥と呼びます。

 

栗の根は、秋になると養分吸収が活発化します。この秋の蓄積養分が翌年の発芽、発根などの成長に使われます。


・収穫


収穫は毎朝5時と夕方の1日2回。夜明け直後と日没前。

一刻も早く、一個も見落としがないように拾い集めます。

 

栗は落下してから収穫されるまでの時間(園内に放置されている時間)が長くなるほど、腐敗果・虫害果の増加を招き、果実品質も急速に低下します。今日拾い忘れた果実は、明日になったらまず商品になりません。


・選果

 

実は、収穫より長時間費やす作業が選果。最初に水槽を使った1次選果。汚れを洗い落とすと同時に、浮いた栗の実を全て取り除きます。

栗の主成分はデンプン。デンプンは水の約1.6倍の重さです。つまり、浮いてきた栗はデンプン比重が軽く、美味しくないのです。

 

そして2次選果。1粒1粒目を凝らして、病虫害果を選り分けます。残念ながら、老眼になると虫が卵を産み付けた穴を見つけにくいようです。

よって、松尾栗園の選果は基本的に40代以下のメンバーで行います。

選果後はその日のうちに冷蔵庫の中へ。1ヶ月半~2ヶ月間熟成します。


・仕込み


焼き栗にする前に、栗の座(おしり)に切れ目を入れます。この仕込みをすることで、栗の実全体に火が通りやすくなります。また、鬼皮が簡単にむけて食べやすくなります。

 

切り口が深いと実割れを起こし、浅いと渋皮が残る。職人技が必要な作業です。


移住当初は

「放っておいても栗は育つんだから」

とよく言われ続けました。

「手間をかけたらもっと美味しい栗ができるんじゃないか」

そう考えているうちに、毎年新しい農作業が増えています。